甲野善紀身体操作術
いい加減、10月27日に試写してきた『甲野善紀身体操作術』について書かなきゃ。そしてTBしなきゃ(それが、ブロガー試写会の条件だから)。
甲野善紀さんについて、甲野さんを見たことのない、技を受けたことのない人たちに説明するのは、とても難しい。誤解を承知して、「身体操作術」を「パソコン操作術」で喩えるなら、甲野さんを技(術)を見るという行為は、ショートカットを知らないパソコン初心者が、ショートカットしまくりの上級者の操作を初めて見る感覚に似ていると思う。あの「え、今どうやったの!?」という感覚だ。
パソコン初級者にとって、例えば、ブラインドタッチで、もの凄い早さでキーボードを打ったり、マウスを凄い早さで的確に動かすことだったら、「すごいなー」とは思うだろうけど、それはまだ想像の及ぶところだろう。しかし、ショートカットを知らない初級者にとって、何工程もかかる操作を一瞬にしてしまうショートカットは、まるで魔法のように見えるはずだ。
ブラインドタッチや、もの凄いマウス捌きが、現代のスポーツ選手だとすると、ショートカット使いが、甲野さんということになる。(しかも、今の甲野さんは、Command+Option+Shift+K くらいの複雑なショートカットへとますます進歩している)
しかしながら、「身体」と「パソコン」は全くの別物であるからして、この喩えには、有効ではない点が甚だ多い。
そこで、『甲野善紀身体操作術』。このドキュメンタリーの出現によって、上記ような、ある意味的外れな説明をしなくても良くなったという点だけにおいても、充分に価値がある。ただ「見る」だけで良いのだから。
このドキュメンタリーは、何よりも自然な状態の甲野さんを映像に捉えているというところが素晴らしい(音楽や編集がちょっと稚拙に感じるところがあったけれど)。
そして、あの稽古風景がなんとも興味深い。何かに取り憑かれたかのように、意識と身体に垣根がなく、まさに渾然一体となったようなクリエイティブな瞬間。
僕は、グレン・グールドの自宅での練習風景を思い出さずにはいられなかった。
※上の写真は、2002年2月に受けたセミナーのときのものです。